仮面ライダーになりたかった戦闘員 名無し 04/07/09(金)01:13:45
……生きてる……?
「おはよ。……約束は守ったぞ。……あんたはまた、ただの戦闘員だ」
ドクターが不意に目配せした。視線の先には、俺と同じタイプの戦闘員がいた。
戦闘員が、不慣れにヘルメットを外す。
その素顔は、まぎれもなく…。

「…あんたと別れた直後、目を覚ました。……一番になんて言ったと思う?
改造人間にしてくれ…ってさ。それで、あんたを迎えに行くんだと。
…反対したよ。
トレーラーにろくな設備は無いし一度改造すれば二度と元の体に戻れない。
それでも、人間の体を捨ててあんたを助けに行った。
ライダーに鉢合わせするかも爆発に巻き込まれるかもしれない。
それでも…わかるか?
それでも――――……あんたと生きることを、選んだんだ」


……何故か、彼女は俺の顔を見ようとせず泣きそうな顔でうつむいている。
仮面ライダーになりたかった戦闘員 名無し 04/07/10(土)01:04:41 No.166618
ためらいながら、彼女は、何度も口を動かし、つぐむ。
――しばらくして、顔を上げて……
泣き出した。…ドクター、彼女に涙を残してくれたのか。
「あ…ごめんね、キミの子供産めなくなっちゃった……」

ああ、君は知らなかったんだ。本当はもう俺の子供なんて産めないって。

「ごめんね…でもあたし…子供が出来ても…キミがいなきゃ嫌だったから…。
…キミがいて…くれな…ぃと…やだったんだからあっ…
忘れて良いなんて…言わないでよぉっ…!!」「……!!」

ああ、泣かないで。謝らないで。謝らなきゃならないのは俺なんだ。
みんなごめんなさい。俺、まだ生きてくよ。
まだ俺、彼女を幸せにしてない。俺、彼女と幸せになりたい。
いくつも命を奪って、いくつも命を見殺して、
一人いつも生き延びて身勝手なのはわかってる、それでも…

「…ひとり…に…しないでぇっ……」「ごめん…ごめんよ…ごめん…」

………ああ、みんな、ごめんなさい。

――神様は酷い。結局俺の願いは一つも叶えてくれなかったんだ。

ありがとう。
仮面ライダーになりたかった戦闘員 名無し 04/07/11(日)01:11:36 No.167967
「うわああ遅刻するっ!」「今日夕ご飯何が良いー?」「カレーでっ!」

今俺は、新しい組織で戦闘員育成教官をやってる。
けど今の組織の主戦力は戦闘ロボットだから大した意味もなく。

「それでは今日は富士の樹海で迷った時の……」
「教官っ!食堂のお姉さんが教官の彼女って本当ですか!?」
「…そうだけど」

彼女は戦闘用の改造を外され、また食堂で働いている。

「ちくしょー、狙ってたのにィッ!!」
「…あー、ドクターとかどうだ?
キツイし酒癖も悪いけどあれで結構泣き虫で可愛いところも…」
「へえ。そうかい。あたしが可愛いか。そりゃどうも」「げ…」
「たまに様子を見に来てやればこれだもんねえ」
「……俺が君達に教えることはもう何もない」「きょ、教官…!」

ドクターは、相変わらずだ。

「イ、イィーッ!!」「教官――ッ!!」

戦闘の無いとても穏やかな日々。
それも半年を待たないある日に突然、終わった。
仮面ライダーになりたかった戦闘員 名無し 04/07/12(月)00:50:43 No.169573
『――将軍が倒れ、首領が眠りについた今我らのすべきことは何か…。
それは、耐えることだ。再びその機会が訪れるその時を。
我らは敗れたのではない。我らの理想は終わらない。
再び首領が目覚める時まで、暫しの別れだ。勇敢なる者達よ――』

「――つか、負けたんだけどな。
首領は寝たんじゃなくてトンズラだし。
で、あんたらこれからどうすんの?」
「ドクターは?」
「開業医やろうと思ってる。改造人間も見るよ」
「……ドクター」「?」
「お世話になりました。ありがとうございます」
「…ば、ばか。あたしはあんたらを改造した奴だぞ」
「ドクターで良かったです。……ドクターに逢えて良かったです」
「…あー…うるせーうるせー。もうとっとと行っちまえ、女泣かせ」
「女泣かせ?」「あ、いや、ちょ、ドクターッ!」
 
 
「――大佐、大使…この世界、そんな捨てたもんじゃないと…あたしは思いますよ」
仮面ライダーになりたかった戦闘員 名無し 04/07/13(火)01:11:03 No.171032
「あの人達の守った世界を…見て回るって言ったよね?」
「そうだけど」「その後は?」
「……えーっと…」「あはは、考えてなかったなー?」
「うう」「あたしはキミがそばにいるなら、どこだって何だって良いよ?」

「あー…と、とりあえずその、あれだ、バンダナ。バンダナ買いに行こ」
「バンダナ?」「ほら…半年前に俺が借りたまま、その……」
「あれ、支給品だから別に良いのに」
「あ、いや、え、えと……バンダナのついでに、
いやついでとかそんなわけじゃなくてって言うかえーと……」
「…なに?」


「…………指輪……とか?」
「! ――…うんっ…」

――仮面ライダー、聞いてくれ。
  あんた達が勝っても、殺された人間は生き返らなかった。
  病気の妹はもういない。だけど、
  
「…ていっ」「ぉあっ?」
  
  彼女は俺に、いつも微笑んでくれているよ――……。